・村人A 男


誰もいなくなった村を徘徊する男です。

家族も無く、性格が悪いこともあり、もともと村で孤立していた存在でした。
ある日、彼は森の中で遺跡を見つけます。
彼には、いかにもお宝が眠っていそうな遺跡に見えました。
危険なのは彼にもわかっていましたが、お宝を見つけたい欲望が彼を遺跡探険に導きました。
金持ちになり、自分をバカにしている村の人間を見返してやりたかったのです。
しかし、遺跡の中で、ある装置に触れた途端、彼の肉体と精神は変化してしまいました。

村では彼の行方が話題になっていましたが、積極的に探そうという者もいませんでした。
しばらく経ち、彼はどこかで死んだものとされた頃に、ひょっこりと戻ってきました。

戻ってきた彼は、村をふらついて、誰かを見つけると、その者を凝視するという行動を取りました。
全くの無表情で、話しかけても何の反応も示しません。
凝視された者が逃げても、その後をつけました。
結局、彼の気が変わるのを待つか、本気で逃げて彼を撒くしかありませんでした。

さらに村人達を困らせたのが、彼の体の変化でした。
他の者が触れようとしても、すり抜けてしまう体になっていたのです。
彼が透明な存在になって、壁をすり抜けたりするというようなことはありません。
ごく普通に椅子に座ったり、扉を開けたりします。
しかし、つきまとう彼を村人がどうにかしようとしても、すり抜けてしまうのです。
ある村人が彼の体の中に頭を入れて、どう見えるか試してみました。
しかし、体内が見えるということはなく、まるで彼自身が存在しないかのように、彼無しの光景になるだけでした。
また、彼は村に戻ってから、一度も食事や睡眠を取っていません。
疲れも感じないらしく、本当に一日中休まず徘徊を続け、誰かを探し続けます。

村人にとって、彼は厄介極まりない存在になりました。
絶えず誰かを見つめ続け、あっちへ行けと言っても反応は無く、実力行使に出ても体をすり抜けるだけです。
家の扉に鍵をかければ、壊してまで彼が中に入ってくることはありませんでしたが、1日中家の中にいるわけにもいきません。

村人達は、彼は幻で、誰かが魔法で自分達に見せているのではないかと考えました。
そこでお金を出し合って、大きな都から幻術に詳しい魔術師を呼びました。
しかし、遺跡のことは彼以外誰も知らないので、彼の現状以外手掛かりは何もありません。
村に来た魔術師は、
「幻を使った魔法は感じられない。
彼は確かにここに存在しているように思える。
私にはこれ以上の事はわからないし、どうすることもできない。 」
と言い残して去り、何も解決しませんでした。

貧しい村なので、さらにお金を出して他の人間を呼ぶことは不可能でした。
村人達はこの状況に耐えられなくなり、しだいにみんな村を離れていきました。

いまや村には誰もいません。
それでも彼は村を出ること無く、徘徊し続けています。


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